
一般社団法人 日本褥瘡学会 理事長
医療社団法人 赤石病院 形成外科
館 正弘
この度、2021年9月の理事会において、第9期の日本褥瘡学会の理事長に選出されました。学会設立後四半世紀を迎えようする本学会の理事長として全力を尽くす所存です。
さて、本学会は多職種が各々の専門性を発揮しながら、チーム医療によって褥瘡予防・治療を話し合う場として1998年に発足いたしました。褥瘡の定義・分類から始まり、危険因子評価ツールの普及、褥瘡状態評価スケールとしてDESIGNを開発し、診療報酬への減算・加算等を通じて行政面においても活発に活動してまいりました。いまではチーム医療による褥瘡対策体制が整えられていることが入院基本料算定の必須項目になっています。DESIGNは治癒予測因子の重みづけを加味し、2008年にDESIGN-RRへと進化し、現在海外でもエビデンスの高さが評価されています。2020年にはDTI疑いと臨界的定着疑いを入れたDESIGN-RR 2020を発表しています。
2020年初頭からのコロナ禍により、医療界は大きな変革を求められております。褥瘡に関しても多職種が協働で一同に会することが困難な事態に陥っております。学術集会や教育研修の場でも大きな影響が生じております。これを機に、教育担当の委員・講師のご尽力により、さまざまな講習会のe-ラーニング化を進めております。また褥瘡の遠隔診断、遠隔治療、看護師による創傷管理も必須のアイテムとなると予想されますので、学会としても取り組んで参ります。
個人的には、本学会での褥瘡局所治療ガイドラインの策定や、特定行為研修に係る看護師の研修講師を長く勤めてまいりました。2021年春に大学を退職し地域医療の前線に身を置くことになり、フレイル高齢者の褥瘡患者が多いことに衝撃を受けております。在宅での褥瘡予防・治療には一般の方々や介護スタッフに対する、教育・啓もう活動が必須であると痛感しております。さらにはリハビリテーション部門の方々に本学会に多数加入していただき、褥瘡発生予防へのさらなる関与をお願いしたいと考えております。
褥瘡を取り囲む環境はこの23年間で大きく進歩してまいりました。それでも少子・超高齢化社会に向かって課題は山積しており、会員皆様方のご支援を頂き、本学会をさらに発展させるべく努力してまいります。
令和3年9月